アングル:妙味薄れる仮想通貨の裁定取引

アングル:妙味薄れる仮想通貨の裁定取引

ビットコインなど仮想通貨が世界各地や交換所間などで価格に差がある状況を利用して稼ぐ裁定取引の隆盛に陰りが出ている。一攫千金を狙ってトレーダーが大挙して押し寄せた上に、仮想通貨の急激な値上がりが一服し、うまみが薄れたためだ。ただ、ヘッジファンドなど大規模な資金を動かせる一部の投資家は、なおこうした手法で利益を確保し続けている。

ビットコインの裁定取引は昨年、ビットコインの値動きが大きくなり、中国など一部の国が取引規制に動いたことで急拡大した。

最も単純なのは、ビットコインをタイなど規制の整った市場のない国や日本など取引が法的に認められた国で購入し、韓国や中国、インドなど取引を禁止している国で売る手口。さらにもっと足の速いトレーダーは、知名度の低い交換所で購入したビットコインを流動性が高くて良く知られた交換所で高く売ってさやを抜く。

ビットコインは1月初旬にルクセンブルクの仮想通貨交換所ビットスタンプで1ビットコイン=1万7600ドルの値を付けたが、当時韓国の相場は2500万ウォン(2万3630ドル)で、34%のプレミアムが乗っていた。

中国が昨年、政府が仮想通貨を発行して資金を調達するICO(イニシャル・コイン・オファリング)と仮想通貨の取引を禁止するとビットコインのプレミアムが急上昇し、裁定取引の動きが本格化した。当初は仲間内だけのグループがメッセージングアプリを使ったり飲み屋で顔を合わせるなどして取引を行っていた。

その後はいわゆるP2Pプラットフォームと呼ばれる「コインコーラ」のようなサイトや、挙句には電子商取引サイトの淘宝網(タオバオ)などを通じた相対取引が始まった。

上海でビジネスとインタラクティブメディア論を教えるニューヨーク大学のクリスチャン・グレウェル教授は「中国人の大手トレーダーは皆コインコーラを使うか、店頭市場のプラットフォームを利用して直接取引している」と話す。買い手と売り手が銀行間で資金をやり取りする場合もあり、仮想通貨の取引は「捕捉がほぼ不可能」だという。

しかしこの数カ月で中国におけるビットコインのプレミアムは今年初めの30─40%から7%以下に縮小した。国境をまたいでビットコインを動かす「ミュール(運び屋)」が大量に出現したためだ。仮想通貨ファンドや個人のトレーダーも裁定市場に大量に参入した。

オーバーシーズ・チャイニーズ・インベストメント・マネジメントで仮想通貨を担当するジョン・デクリーン氏は「仮想通貨の裁定市場は下り坂だ。全体的に投資の意欲は薄れている」と述べた。「市場参加者が増えすぎた。昨年12月から今年1月は一夜にして10倍の利益が得られたから、プレミアムは30%に達していたのだが」という。

仮想通貨交換所ゼンプリベックスのラマニ・ラマチャンドラン最高経営責任者によると、裁定取引の迅速な実行が可能でコストも低いヘッジファンドが、個人投資家を圧迫している光景も見受けられる。

ヘッジファンドも個人投資家と同じように、仮想通貨の価格差を利用して収益を稼ぐ。ただし取引がずっと大口なので、より小さな価格差でもうけが出る仕組みだ。

KITトレーディングのピーター・キム氏は「最初のうちは30%のプレミアムで裁定取引するのだから、タイに出かけてビットコインを買い、中国や日本、韓国で売ればよく、楽な商売だ」と説明。その上で「こんな絶好な機会は長続きしないものの、これほど単純ではなくともまだ利益を上げる方法はいくつもある。特に1回の取引のプレミアムが3ベーシスポイント(bp)程度が当たり前の私のようなトレーダーならなおさらだ」と話した。

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